ボヘミアン・ラプソディ 第1話 獅子公ネクラン

ボヘミアン・ラプソディ

第1話

獅子公ネクラン

 この物語は西暦870年1月1日、ボヘミア公爵領を治めていたプシェミスル家のネクランがスラブの古い教えを捨て、キリスト教カトリックへと改宗したところから始まる。

 当時、ボヘミア公国は西にカール大帝の血を受け継ぐカロリング家の東フランク王国、東に大モラヴィア王国というキリスト教国に挟まれていた。北にはスラブの教えを守るルーサティア大族長領とシレジア大族長領が存在し、地理的に宗教の境界線上に存在していたのだった。

 ネクランは悩んでいた。北からは略奪を目的とした襲撃が度々あり、東西からは異教の地として聖戦の対象とされていたからである。襲撃を撃退し続け、東西に睨みを効かせていた不世出の戦略家ネクランであったが、齢70の高齢となった今、彼が選んだ道は古いスラブの神々の道ではなく、カール大帝以降、欧州を飲み込まんとしていた救いの御子の道であった。


 彼のこの選択は後世に神秘的な伝説として語られるようなものではなく、いわば現実的な打算の結果であった。同じスラブの教えを奉じてるからといって北からの襲撃や土地を狙う争いがなくなる訳では無い。だが、キリスト教に改宗すれば少なくとも東西の王国から異教の地に対する聖戦という大義名分は失われる。さらには結婚による血の交わりで繋がる同盟という選択肢も増えるのである。

 後に獅子公と呼ばれることになる男の最後の大きな決断であった。

 この決断の5年後である西暦875年、ボヘミアの地を守り続けたネクランは75歳で老衰による穏やかな旅立ちを迎えた。果たして彼が向かったのはどちらの神の御下であったのか。

 

 この記事はParadox Development StudioのCrusader Kings IIIをプレイした記録を基に筆者の妄想を加えて捏ね繰り回した物語です。攻略などのお役には立ちません。また、プレイに際してはJapanese Language Modを使用させていただいております。ゲームの開発会社様及び日本語化に尽力された翻訳有志の皆様に感謝と敬意を表します。